JIS第二水準漢字のススメ
H22/10/23
 code 5160 ~ 516F
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5160
読み: オウ,コウ/おおとり
解説: これはこれしかない、【鳳凰(ホウオウ)】のための字である。「鳳凰」は伝説の神鳥であるが(某ビール会社のウーロン茶の商品名にもなっているね)、この「凰」は雌の鳳凰を表している。当然「鳳」は雄というわけである。でも、「鳳」だけが第一水準漢字というのはなぜなのか?
用例: 「十円玉の表に描かれているのは平等院鳳凰堂である。」
5161
読み: カン/かんにょうかんがまえうけばこ
解説: 部首名である。熟語はない。口を大きく張り広げた様を表している。
用例:
5162
読み: カン/はこ
解説: 「函」の俗字。無用の字。
用例:
5163
読み: ジン/やいば
解説: 「刃」の俗字。使い道が出てこない・・・
用例:
5164
読み: セン/
解説: この字がまた困り者である。とりあえずは音と訓を示したが、実の所は「刊」の誤字という説もあり、現在のところはっきりしていないのである。どちらにしろ、字の持つ意味は「刊」と同じで、「削る」とか「切る」の意であり、さらには熟語も皆無に等しい。【刋改(センカイ)】という言葉が後漢書に出てくるが、意味は「板木を削り改める」ことだそうである。ワープロ全盛の現代では、カーソルを移動させて上書きするだけで済む。ま、早い話がパソコンにこんな字いらない。
用例:
5165
読み: ケツ/えぐ
解説: この字を騙されたと思ってお手元の漢和辞典で調べてみてほしい。おそらくどこにも載っていないことと思う。どこから見つけてきたのかと感心してしまうほどである。ま、呆れてばかりいても発展的でない。ある物はしかたがないので、使い方を考えてみることにしよう。
この字は「抉」と同義であるので、使い方もそれと同様と考えてよさそうである。「手でえぐる」のか「刃物でえぐる」のか、どちらかを強調したい場合などで使い分けができそうである。しかし、無理に使うこともないような字であることは確かである。
用例: 「その少女は通り魔に脇腹をられて無念の死を遂げた。」
5166
読み: フン/はねくびはね
解説: 刀で首(頚動脈)を切ることを意味する。中国での自殺方法である。日本の切腹に相当する。【刎死(フンシ)】は自分の首を切って死ぬこと。【刎刑(フンケイ)】は「打ち首」のこと。そしてこれは覚えておきたい、【刎頚之交(フンケイノマジワリ)】。意味は相手のためなら首をはねられても後悔しないほどの親しい交友のこと。太宰治の「走れメロス」で、メロスとその友人はまさにこの関係であったわけだ。
用例: 「追い詰められた王女は刎死して果てた」
5167
読み: ゴウ/おびやか
解説: 「劫」の俗字。
用例:
5168
読み: サン/けず
解説: 書物の不要な部分や間違った部分を削ることを意味する字である。昔の中国の書物というのは竹札や木札に文字を書き、それを革紐で綴ったものであることは知っている人も多いと思う。そんな書物の書き損じを修正するとなると、小刀などで間違った部分を削って消すわけ。「冊」は書物そのものを表し、「りっとう」は刃物を表しているわけだから。ゆえに、この字の「けずる」は物を削るのではなく、文章をけずる意である。「添削」と言わずに「添刪」と書きたくなってくる。【刪削(サンサク)】は文章の一部を削除してしまうこと。【刪省(サンセイ)】【刪約(サンヤク)】【刪略(サンリャク)】はどれも文章の一部をけずり省くこと。【刪修(サンシュウ)】【刪正(サンセイ)】は文章の不要な部分を取って整えること。熟語はこれらの他にも数多くあるが、みんな似たような意味。
用例: 「月刊絵夢絶党は全く刪修されることなく発行される、この上なくライターを尊重する雑誌である。」
5169
読み: カツ/けず
解説: この字はそこそこの頻度でお目にかかる字。その多くは【刮目(カツモク)】という熟語ではないだろうか。ちなみに【刮眼(カツガン)】も同意。「目をカッと見開いてよく見る」というような意味である。この熟語は覚えておいてそんはないはず。その他【刮刷(カッサツ)】は汚れを削り取ってきれいにすること。【刮磨(カツマ)】は「擦り磨く」「修行する」の意。
用例: 「北斗神拳の奥義、刮目して見よ!!」
516A
読み: コ/る,えぐる,
解説: 字意は刃物でもって物を大きく二つに裂くこと。あるいはU字形にえぐり取ること。【刳心(コシン)】は「自分本位の心を取り去る」こと。【刳剔[5171](コテキ)】は「物を切り裂く」こと。ごく一般的に使う「くりぬく」という言葉の「くり」はこの字を使って「刳り」と書く。使える第二水準漢字のひとつ。
用例: 「パンの白い部分だけをり抜いて食べてしまった彼に幻滅。」
516B
読み: セツ
解説: 熟語【刹那(セツナ)】のための字と考えていいだろう。これは仏教用語で「非常に短い時間」のこと。またその時間の単位。サンスクリット語のksanaを音訳したものである。ちなみに大人が指を弾く時間は65刹那だそうである(60刹那、90刹那などの説がある)。1秒が75刹那であるとも言う。これだとCDの1フレームがちょうど1刹那になるので面白い。ご存知ない人のために解説しておくと、CDは1セクタが2KB強であるが、この1セクタ(フレームと呼ぶ)を読むのに要する時間が1/75秒と決まっているのである。
【刹鬼(セッキ)】は仏教でいう悪魔、鬼のこと。【刹帝利(クシャトリア)】はインドカースト制における王族・武家階級のこと。
用例: 「店員が目をそらしたその刹那、老婆は刺身のパックを自分のカバンに入れた。」
516C
読み: ソウ/はじめる,きずつ
解説: この字は俗字。本字はJISにはない。素材に切れ目を入れることを意味する字であり、ひいて工作などを「はじめる」意になる。字意としては「創」と全く同様と考えて差し支えない。【剏意(ソウイ)】は「思いつき」のこと。創意と同意。【剏業(ソウギョウ)】は事業を始めること。その他、【剏立】【剏始】など。意味は推して知るべし。
用例: 「(有)風雅システムは1989年に剏立され現在に至る老舗ソフトハウスである。」
516D
読み: ケイ/くびきる,くびはね
解説: どうも「りっとう」の字は物騒でいけない。この字は見たとおり「頚」を「刀」で切るという意。【剄死(ケイシ)】【自剄(ジケイ)】は自分の首を切って死ぬこと。先に出てきた【刎[5166]死】と同意。【剄殺(ケイサツ)】は首をはねて殺すこと。また、「化剄」「暗剄」「寸剄」など、中国拳法などの用語に使われる。
用例: 「その裏切り者は剄殺に処せられた。」
516E
読み: コク/
解説: 字意としては「克」と「刻」を足したようなもの。熟語もそれに準ずる。「克」は自分や相手に打ち勝つ意。「刻」はきざみつけるという意。【剋己(コッキ)】は己に打ち勝つこと。【剋意(コクイ)】は心を苦しめるとか心を砕くこと。【剋日(コクジツ)】【剋期(コッキ)】は期日を決めること、或いはその期日。などなど、熟語は豊富にある。「克」と「刻」に置き換えて使えるオールマイティーな字である。
用例: 「日本の戦国時代は下剋上の時代でもあった。」
516F
読み: ラツ/もと
解説: 「刺」と間違えないように。似ているけど別の字。「跳ね返る」という意の字である。この字は覚えておいたほうがいい。まず典型的熟語は【溌剌(ハツラツ)】。『元気ハツラツ、オロナミンC!』のハツラツである。非常に元気がよく飛び跳ねる様子のこと。【乖剌[502A](カイラツ)】は逆にはね返ること。【剌謬(ラツビュウ)】は食い違うこと。また、【剌剌(ラツラツ)】は風の音。
この字にはもう一つ別の使われ方がある。それは日本において外来語の「ラ」の音を当てるときに使用されるのである。例えば【亜剌比亜(アラビア)】、これは国名「サウジアラビア」のこと。【伯剌西爾(ブラジル)】も同様。
用例: 伯剌西爾料理には牛肉や豆を使ったものが多い。」「外では凩が剌剌と吹き荒んでいる。」
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