H25/5/5
 絵夢絶党ソフトウェアヒストリー第三回目は「ゲーム特集」である。
No.11 うるセイアドベンチャー
作者:杉之原名人
移植者:前川昭広
対応機種:MZ-80K/C/1200/MZ-700/X1シリーズ
形式:マシン語(アセンブラ)
 杉之原名人がASCIIの「表参道アドベンチャー」に触発されて作り上げた「完全テキスト型アドベンチャーゲーム」である。名前の通り、高橋留美子氏の「うる星やつら」を題材にした完全オリジナルシナリオである。
 なぜアセンブラで組まれているかというと、1.解析されて解答がバレにくい(もちろんデータは暗号化されている)、2.サイズをコンパクトにできるため、気軽にプレイしやすい(カセットテープメディアのため)、3.インスパイアされた表参道アドベンチャーもマシン語だった、4.作者がとにかくアセンブラで組みたかった(勉強がてら)、という4つの理由による。
 さて、ゲーム内容だが、当時のアドベンチャーゲームのセオリーに倣い、目的も何もわからない状態からゲームがスタートする。移動コマンドによって、これも不明なマップの中を移動しながら、数々のイベントに遭遇していくうちに目的を把握し、ゲームクリアを目指す。うるセイアドベンチャーの場合、プレイヤーは諸星あたる君となり、諸星家から外に出るのが主目的となる(しのぶさんからのメッセージで判明)。ただし、ラムちゃんやテンちゃん、こたつネコなどの妨害(?)があり、そう簡単には家から出られない。電撃や火吹きなどを喰らってしまうとゲームオーバー。どうやって彼女たちを大人しくさせるかがゲームクリアの鍵となる。このあたりは原作を知っているとクリアしやすいと言えるだろう。
 完全テキスト型アドベンチャーゆえ、プログラムを起動すると、表示されるのは文字入力を要求するプロンプトのみである。入力できるのはアルファベットと一部の記号のみ。「動詞のみ」または「動詞+目的語」の形態で英語で入力する。移動コマンドのみは例外で、N.やE.というように方角を表す英語の頭文字に省略を意味するピリオドをつけて入力する。党内でも「英語の勉強になる」との声も聞かれ、党員が皆「電気冷蔵庫」を英語で書けるようになったらしい。このソフトもZeroSoftブランドで市販されている。
 前川氏がX1シリーズに移植している。絵夢絶党刊「零壱症候群1(デヂタルシンドローム1)」に掲載。
No.12 億万長者GAME
作者:阿閉雅宏
対応機種:MZ-2500
形式:M25-BASIC
 「人間アセンブラ」として名高い阿閉氏の作としては珍しいオールBASICのゲームである。ボードゲームで有名な「バンカース」をコンピュータゲームにしたものである、と作者は言っている。所持金5000万円と2カ国の土地を所有した状態でゲームスタート。自分が破産するか、他(コンピュータ)3人が破産すればゲームオーバーとなる。ビルを建てたり、株を売り買いしながらゲームを進め、[サイコロを振る]→[ビルを建てる/建てない]→[サイコロを振って移動]→[移動先の土地を買う/買わない]→[他人の土地ならそれなりの処理]→[特殊な場所ならそれなりの処理]の繰り返しとなる。
 このゲームを続けていくと「プレイヤーの性格が変わっていくこと必定」とのこと。絵夢絶党刊「零壱複合心理(デヂタルコンプレックス)」に掲載。
No.13 Morning Coffee in Le CREOLE.
作者:坂田浩
対応機種:FM-7/77/AVシリーズ
形式:マシン語(アセンブラ)
 FM-7シリーズ用のバリバリのシューティングゲームである。作者はアーケードゲームの「ムーンクレスタ」をイメージして製作したと語っている。
(日本物産(株) "ムーンクレスタ" - https://www.youtube.com/watch?v=qH9LOA9Ouiw)
 FM-7用のシューティングゲームであるため、当然のようにサブCPUにプログラムを転送して、メインCPUと同時にプログラムを動作させる仕組みになっている。画面をアクセスするルーチンやキャラクタデータ(14種類)はサブCPUのメモリ上に置かれている。作者はメインCPUとサブCPUが極力休むこと無く動作するように苦心したという。少ないサブCPUのフリーメモリを有効に利用する工夫が凝らされている。BIOSは一切使用されていないため、フルRAMモードでも動作する。
 FM-7のサブCPUは2MHzのクロックで動いているが、ビデオ関係のウエイトや割り込みがかかる上、タイマーなどの割り込みも処理しているため、実質的にはクロック0.8MHz程度の処理能力しかない。作者はV-RAMアクセスフラグと呼ばれるサブCPUシステムのフラグ(このフラグが下りているとビデオ関係のウエイトがかからない)を極力こまめに上げ下げして、サブCPUにかかるウエイトが最低限になるよう腐心している。FMシリーズのハードを知り尽くした作者ならではの作品である。絵夢絶党刊「零壱症候群2(デヂタルシンドローム2)」に掲載。
No.14 ベゼレネーター(LUNAR CITY S.O.S.)
作者:中島孝
対応機種:MZ-80シリーズ/MZ-700
形式:マシン語(アセンブラ)
 芸夢狂人氏作のPC8001用ゲームソフト「LUNAR CITY SOS」のMZ版である。YOU TUBEにPC-6001版の動画がアップされているのでご参考までに。
(コムパック "ルナシティSOS" - https://www.youtube.com/watch?v=wbJFsGEj4bQ)
 このソフトについては、詳しいことを「中島神話」で書いたので、そちらを参照していただきたい。「よく、オールアセンブラでここまで作り込んだ」と褒めてやりたいほどの出来なのだが・・・・・まぁ、いい。
No.15 リボルティー
作者:近江慎一郎
対応機種:X1シリーズ
形式:マシン語(アセンブラ)
 X1で高速フルカラー2ドットスクロールを実現した驚異のシューティングゲーム。また、絵夢絶党で初のチーム開発ソフトでもある。プログラム、ドットデザイン、作曲、オープニンググラフィックなど、それぞれ党員の得意分野を活かして製作された。
 しかしなんといっても特筆すべきは作者の近江氏の高速スムーズスクロールプログラミングだろう。Z-80CPUのI/O空間にV-RAMが配置されたX1では、グラフィック画面のフルカラー高速スクロールは不可能と考えられていたからである。それを発想の転換で可能にしたところは賞賛に値する。グラフィック画面1プレーンのみのスクロールでフルカラーを実現しているのがミソ。多彩な武器にデカキャラも登場し、初代X1(マニアタイプ)でも動作する。
 また、コミケでも販売され、百数十枚があっという間に完売した実績がある。このときのバージョンは全3面のみの構成であった。
 このソフトは(有)風雅システムに引き継がれ、「リボルティー2」として全国販売された。このとき、直接通販で購入すると、通販特典としてこの「リボルティー」がサービスされている。