中島神話

ついに明かされる中島君の過去--------これはもはや超常現象だ!!

絵夢絶党編集部

 中島君には数々の神話が存在する。今回編集部では、その中でも神話中の神話を紹介することにする。あらかじめことわっておくが、これはまさに神話であり、かつ紛れもない真実である。


1.彼は通常の会話を行なっているぶんにおいては、ごく普通の変人である。しかし、彼は生まれてこのかた身内以外の女性と会話したことが3回しかない!と断言する。神に誓ってこの3回以外には例外なく異性間の会話がないのだそうである。その貴重な3回の経験を彼は淡々と話してくれた。

其の壱:女の子 「中島君、教科書見せて」
其の壱:中島君 「あ……うん。」

其の弐:女の子 「中島君、席かわって?」
其の弐:中島君 「え……いや。」

其の参:女の子 「中島君、明石家さんま知っとる?」
其の参:中島君 「ん……なーん。」

以上がそのすべてである。想像に難い彼の私生活が窺われる。

 さて、彼が党集会においてこの告白を我々にしてくれたとき、たまたまひとりの女性(21才)が遊びに来ていた。我々は親心から彼に思い出に残る青春の1ページを提供しようと思い、この女の子に中島君に話しかけてもらった。以下がその一部始終である。

其の肆:女の子 「中島君、歳いくつ?」
其の肆:中島君 「え……18。」

この日、彼に新たな青春のメモリーが加わった。

中島君、お姉さまに囁かれるの図

2.中島君の愛機はMZ-80K2である。それは現在も変わってはいない。この一台のみである。ちなみに拡張はGP-80(プリンタ)のみである。当然フロッピーディスクなどは接続されていない。本体付属のCMT(カセットテープ)が唯一の外部記憶装置である。

 彼の主要使用言語はZ-80アッセンブラである。BASICやコンパイラは基本的に使用しない主義である。そんな彼が励んでいたのはゲーム作りである。もちろんオールマシン語の高速ゲームである。私の知っている限り、「エイリアンX4」,「ベゼレネーター」という2つの作品がある。共にオブジエクトは10数KBある。当然ソースということになると100KB近くになる。はて、メインメモリ最大48KBというMZ-80で如何にして彼は開発したのだろうか。ましてやフロッピーすらないのに………。 答えは「根性」である。シャープのシステムプログラム4本セット(¥20,000) のみを使用していたのである。これは筆者も所有しているが、「エディタ(もちろんラインエディタ)」,「アッセンブラ」,「リンカ」,「シンボリックデバッガ」のセットで、カセットテープ4本から構成される。以下はその使用方法である。

 まずエディタをロード、起動し、そこでソースプログラムをロードしてデバッグする(一回にロードできるソースは最大約40KB)。デバッグが終わったらこれをアスキーセーブする。次にモニタに戻ってアッセンブラをロード、起動する。さっきセーブしたソースをCMTにセットしてアッセンブルを実行する。アッセンブルが終了したら生テープに入れ換えて、作成されたリロケータブルバイナリファイルをセーブする。ソースが複数ある場合、つまり分割アッセンブルの場合はこの作業を繰り返す。(万が一にもエラーが発生すれば、エディタの起動に戻ってすべてやり直し。)モニタに戻ってリンカをロード、起動する。リロケータブルバイナリファイルがセーブされているカセットをセットしてリンク作業を行なう。分割アッセンブルの場合はこれを繰り返す。最後までリンクが完了したら別の生テープをセットして、実行可能なオブジェクトファイルを出力する。モニタに戻って血と汗の結晶のオブジェクトを走らせる。バグが発生すればシンボリックデバッガを起動してデバッグを行なう。バグが解明したら再びエディタの起動に戻る。

 DOSが当り前の今日、気が遠くなるような作業である。しかし彼は40KB近くの3本ソースからなるプログラムを半年かけて完成させた。一回のアッセンブルに要する時間(エディタの起動からオブジェクトの出力まで)は約1時間半であるという………。中島君曰く、

 「日に2回しかデバッグできんかった。」

彼はこういう毎日を1年間続けたのである。その甲斐あってか「ベゼレネーター」のMZ-700への移植版は、PIO(工学社)に掲載された(※コラム「ここでもやっぱり中島君」参照)


(注)「ベゼレネーター」はあの有名な「ルナシティーSOS」のMZ版である。(この名前をつけるとき、私は夜の10時ごろに中島君からの電話を受け、延々と相談相手をさせられた経験がある。結局、1週間ほどしてから彼から電話があり、相談させられたときとは全く関係の無い、このネーミングとなった。)しかし、MZ版といっても中島君の移植である。はっきり言って移植などという生やさしいものではない(だいたいオリジナルの「ルナシティーSOS」は80桁モードオンリーのゲームである)。オリジナルでは4回分裂すれば無抵抗に落下してくるはずの「トポン」といういわばミサイルが、中島版だと突然ギャラクシアンのごとく勝手に編隊を組んでそれはそれはすざまじい攻撃を開始する。バリアなどあっと言う間にぼろぼろである。プレイヤーを完全に無視したゲーム構成は、やはり彼ならではのものであろう。

 もうひとつ、「エイリアンX4」がある。(これもプログラミングに関してさんざん電話で質問を受け、母に頼んで居留守を使ったことがある。「そっ、そっ、それじゃあ………」という同じ質問に何回も答えるのは、並の神経ではそうそう続かない。)これはいわば「三次元平安京エイリアン」である。かといって「エイリアン・パニック」とは異なる。真剣に3D版なのである。つまり5階建てのビルの各階にそれぞれエイリアンがうようよしており、検非違使(プレイヤー)は各階を行ったり来たりしながら穴を掘ってエイリアンを落とさねばならない。しかしこれだけではエイリアンは死なない。ひとつ下の階で生き返ってしまう(下にもエイリアンがいれば両方死ぬが)。殺すときは2階以上落とさねばならないのだそうである。要するに一階下に穴を掘っておいてからその上の階の同じ場所にも穴を掘って、そこに敵を落とさねばならないのである。もちろん「3段落し」や「頭上落し」も有効である。が、正直言わせてもらえば、難し過ぎて敵を3匹も殺せないうちに殺られてしまう。(当然、作者の中島君も1面クリアができないそうである。)ちなみに一階に穴を掘って落とすと、なぜか5階に落ちて来る。


3.中島君が高校入試を来春に控えた夏のできごとである。このときも私は毎週のように彼からの電話に悩まされていた。何を隠そう高校の選択である。進学校の魚津高校か、あるいはそうでない桜井高校か。魚津は危ない。桜井はまず大丈夫。でも後を考えると魚津だし……。結局、魚津高校に合格したわけだが、彼の精神安定材になった私は隠れた犠牲者である。週に一回以上、平均30分以上も彼と一対一で話し合うのであるからして………

 まあ、そんなことはどうでもいい。そういった背景の中での話である。以上に述べた通り、彼はコンピュータがあると完璧に熱中するタイプである。この誘惑の中で彼が受験勉強など手につくはずがない。が、それは本人も十分に理解していたらしい。ある日の党集会でのことである。

 「ぼっ、ぼく、こっで、しばらく党会に来れんわ。」 

中島君が突然こう言った。もちろん受験のためである。なかなか結構なことである。だが、普通でないのはこれからである。

 「マイコンあると気が散ってしかたないから、ソフトみ~んな地面に埋めてしもたから………」

MZ-80はROMにIPLしか持っていないので、プログラムの入ったカセットテープがないと全く作動しないのは有名な話である。ゆえに彼はそのカセットを全部ビニールの袋に入れ、庭や縁の下など数カ所に分けて地下約30cmのところに埋めてしまったのである。これではコンピュータのことは忘れるしかない。…………だがー………

 「でも、埋めた場所忘れてしまわんか心配で心配で勉強手につかんわ。」

 「あほ!紙に地図書いておけばいいやないけ?!」

 「うん。そー思ってもう書いた。………でも、もぐらが穴掘っとってビニールの袋破らんか心配で………うち、もぐらでることあるから。もし「エイリアンX4」のソース壊れたら死んでも死にきれんわ。」

 「そしたらそのソースだけ家に保管しておけばいいやないけ! どうせソースだけじゃMZは動かないだろ?」

 「うん。そう思って1本だけ引出しに入れておいた。」

 「…………おっ、おまえなぁ~!!!」

思い出すと腹が立ってくるので、この話はこれくらいにしておこう。ちなみに半年後に掘り返したところ、すべてのソフトが無事に動いたということである。


佇む中島君

4.中島君は高校2年のときの一ヶ月のお小遣いが、なんと¥1,000ポッキリであった。ちなみに月一回の党の大集会に出席するためには、彼の家からだと交通費だけで往復1000円以上かかる。

 「だから2カ月に一回しか来れんが。」

 彼は党集会に出席するためだけに小遣いを貯めていたのである。


5.「中島君の青春コーナー」とよばれる時間が党集会にとられたことが一時あった。その名の通り、中島君に青春をコーチするための時間である。

 その日も中島君の女性論について論議されていた。いったい彼は女性のことを何だと思っているのかが全員の疑問だったのである。が、その疑問はますます深まる一方である。

 「まさかとは思うけど、中島君、子供はどうやったらできるかしっとるよね。」

 「えっ?………どっ、どうやるが?」

 「………おいっ、お願いだからまじめに正直に答えてくれないか?!」

 「えっ、そっ、そっ、そんなこと言われても…………どうやるが?」

これが某18歳の青年の実態である。党員一同、これを聞いても笑えなかった。彼のお父さんは某工業高校の教師をなさっておられるが、まあ、普通の人である。(普通と言っても、テレビを買うとすぐに裏ぶたをはぐって、改造してしまう人である。ちなみに中島君のMZも改造されているそうである。)どういった教育をされているのか知らないが、ちょっとばかり異常である。

 『これではいかん!』と心配した党員一同は、なんとか彼に性教育を施そうとした。たまたまそのとき、党長が部長から預かっているという「×本」を出してくれた(どーゆー部長だ!)。もちろん女○器まる出しのやつである。『いきなり刺激が強過ぎるかな』とも考えたが、荒療治を以てせねば彼には効果あるまいとのことから、直接それを「こーやってやるんだ!」と中島君に見せてしまったのである。

 「…………うっ、うっ、うそっ!! ほんまにこーゆーことするが?!」

確かに刺激が強過ぎたようである。彼の目は血走り、からだは小刻みにふるえていたように憶えている。が、隅々に至るまで熟視していたことも確かであるが。

 この日、中島君はまた一歩大人になった(はずである)。

  中島君のお父さんの

ワンポイントアドバイス

 先に述べた通り、中島君のお父さんは某工業高校の電気の教師である。また、絵夢絶党においても最年長党員として(昔は)頑張っておられた。そんなお父さんからこんな話をお聞きしたことがある。

 テレビやCRTディスプレイには寿命がある。昔の真空管式のものは真空管のヒーターが老化してくると、カソードが十分に加熱できなくなり、増幅作用が低下してくる。昔のテレビなどは、古くなるとよく画面の上下が迫ってきて表示範囲が横長になってしまうことがあった。経験のある方もおられることと思う。これも真空管の増幅作用の劣化によるもののひとつである。

 最近のものはすべて半導体化されており、このような劣化はなくなった。寿命があるとすればケミコン(電解コンデンサー)くらいのものである。しかし、もうひとつ忘れてならないものがある。ブラウン管(CRT)である。これはまごうことなき真空管の一種である。よって、最近のテレビやCRTディスプレイの寿命はケミコンとブラウン管にかかってくることになる。だが、ケミコンは技術の向上により寿命が延び、さらにIC化によってその数も減ってきている。問題はブラウン管なのである。

 よく誤解されるが、実際にはブラウン管の寿命は短いものではない。通常7~8年で寿命が来るといわれるが、実際には20年も30年ももつのだそうである。しかしそれではメーカーが困ってしまう。そこで、敢えて実際の安定範囲以上の電流をヒーター加えて寿命を縮めているのである。だから、テレビを買ったらブラウン管のヒーターに直列に適当な値の巻線抵抗(ホーローやセメント抵抗でもよい)を入れてやると、寿命はグーンと延びるのだそうである。当然、表示までの時間は若干長くなることになるが。

 中島君のお父さんからのアドバイスでした。

ここでもやっぱり中島君

 本文中にあるように、中島君のオリジナルソフト「ベゼレネーター」は昭和59年7月号の「PIO」(工学社)に掲載された(P-58~)。しかし、……………しかし、中島君はここでもやっぱり中島君だったのである。以下の文はそのとき掲載された文章そのままである。

 I/O '81年4月号のPC-8001用「LUNAR CITY SOS!」の移植版です。自分なりに遊んで作ったため、原作といろいろ違う部分があります。

   --- 中略 ---

 オールマシン語のゲームはこれで2作目になります。

 実は、このゲームにはバグがあります。そのバグというのがこれまで1年間遊んできて(500面程クリアしました)3回しかでてこなかったというしろもので、ゲームをやっていると突然、画面上の敵全部が止まるのです。ビーム船は自由に動くし、バリアも張れるのですが………最初に出たのが文化祭の前日であせってしまいました。

 最後にバグが出たとき調べてみると、敵のワークが初期化されていました。一応敵のワークを初期化するルーチンが初期設定ルーチンにひとつありますが、それに伴って初期化されるべき所が初期化されてなかったため、そこを通ったとは考えられません。他に敵のワークを初期化するプログラムはないし………。不気味ですね。

 また、このゲームには隠れポイントがあり、ある状態に持ち込むとかなりの高得点が得られるようになっています。それは非常に難しく、私自身知っているくせにやったためしがありません(理論上は可能なのですが)。やれた人がいたら教えてください(ヒント:少ない得点は見捨てる)。

 最後に、MZ-700システムを貸してくれた絵夢絶党のみなさん、本当にありがとうございました。

 「中島君の日記」を愛読されている読者諸氏には、特に解説しなくても十分に笑っていただけると思う。冒頭の「遊んで作ったため………」などと敢えて断わりを入れるところなど、まさに中島君している。また、臆面もなく黙っていれば分からないようなバグまで白日のもとにさらけ出し、さらに読者にとってはまったくどうでもよいバグ・レポートまでしつこくしている。とどめに無責任きわまりない「不気味ですね」の一言が中島君を醸し出していまるといえよう。しかし、これでもまだ彼にとっては飽きたらぬらしく、誰もできないような恥ずかしい隠れ技についてまでも暴露してる。ここでもとどめは「やれた人がいたら教えてください」という無責任な一言。1年もかかって作者ができんのに他人ができるかっつーのっ!!