H23/6/18
 「貴方の視力は?」と尋ねられて大威張りで「1.5です。」と答えられる貴方はコンピュータ・プログラマーですか? 勿論、矯正した視力は別ですよ。つまり、それくらいにコンピュータ関係者は目が悪いんです。ここ数年の間に驚くべきスピードでコンピュータがあらゆる方面に導入され、たとえ誰であろうとコンピュータと無関係ではいられなくなってきました。コンピュータを直接見たことがなくとも、どこかでそれが処理したものの恩恵にあずかっているはずですから。
 これらコンピュータの導入によってプログラマーという職業適性も生まれたのですが、一方ではそれに伴う傷害も世に現れてきました。その最たるものが視力低下でしょう。
 それではプログラマーの悩み「視力低下」にどう対処していくべきなのでしょうか。これから項目別に考察していきましょう。
目が疲れやすい
 遠視や近視、乱視などの軽い屈折異常があるとき、眼鏡等で矯正するほどでないと自分で判断したり、美容上眼鏡をかけたくないなどの人は疲れ目を持っているものです。この場合適切な判断をドクターに仰ぐべきです。疲労を蓄積させて知らないうちに視力を低下させるより、適切な処置を施したほうが良いと思われます。
目を細めると良く見える?
 カメラを趣味としている人ならば誰でも知っていることですが、できあがる写真を鮮明にしたい場合は絞りを絞り、そうでない場合は開きます。これと同様に目を細めれば網膜上に結ぶ像は鮮明化します。多少の屈折異常がある場合、この違いはより明確になります。とってかえせば、このピンホール効果を有難いと感じれば感じるほど貴方の目は悪いとも言うことができそうです。詳細なデータは省略しますが、低視力者において目を大きく開いた場合と細めた場合とで視力差は特に激しく、0.05から0.5に上がるといったこともそう珍しいことではないと付け加えておきます。
 視力検査の際、目を大きく開いて測定しなければなりません。目を細めているのを見逃す検査者は素人です。
眼鏡
 良く見える眼鏡が良い眼鏡であるとは限りません。眼鏡が正しくないと、害がゆっくりと積み重なって数十年も経ってから障害が現れてくるものなのです。
 一般に眼鏡は物を見るための道具だから良く見える眼鏡が良いとか、あるいはただ単にファッションのためだけにかける人とかもいます。眼鏡のせいで失明したという話は聞いたことがありませんが、悪い眼鏡で起きる障害のひとつに、徐々に視力が落ちていき失明はしないまでも見えそで見えないという、いっそ失明した方がなんぼかましだという症状のものもあります。
 眼鏡を選ぶ難しさは、障害が忘れた頃にやってくるということです。ですからドクターに相談することなしに眼鏡を作るということはあまりにも軽率であると思います。ことに貴方がかける最初の眼鏡は、貴方の目の今後を決定する重大なキーポイントとなります。
 常用する眼鏡は慣れることが肝心です。最初は気になってもいずれ慣れます。また、専門医の処方によって作られた眼鏡は必ずしも良く見えさせるものだとは限りませんから、よ~く承知しておいて下さい。
コンタクトレンズ
 コンタクトレンズの長所は、直接角膜にレンズを乗せるため光軸が正確に瞳孔にあたり、ずれにくいという点です。また角膜の陥凹部とレンズとの間に涙が溜りますから、必然的に乱視が矯正される点も見逃せません。しかし、コンタクトレンズの最大の短所は異物であるということです。神経質な人、目に病気がある人はだめ。使用によって角膜に傷がついたり、あるいは化膿したり、そして角膜は涙によって酸素と栄養を供給してもらっているのですが、少なからずそれが阻害されたりします。ですから長時間の使用には耐えられません。ソフトコンタクトと呼ばれるものでは酸欠にある程度対処できるのですが、レンズ内に細菌が繁殖し易く、浄化を頻繁に行う必要があるため、やはり面倒くさがり屋には不向きです。また、先ほど述べた陥凹部による乱視と異なり、陥凸部による乱視の場合では効果が逆になります。つまり余計に酷い乱視になってしまうのです。
眼鏡を常用するか
 貴方の目がどの様な状態であるかによって多少異なりますが、専門の医師の指示がない限り眼鏡は常用するにこしたことはないでしょう。もし、例えば学習時のみに眼鏡をかけることにしますと、矯正した映像と裸眼でみた映像とが交互に脳に送られるわけで、同じ距離で同じ物を見るにしても2種類のピント合わせの情報が脳に存在することになります。それをときに応じて使わなければならなくなり、ピントの情報を送る方も送られる方も疲れやすくなるというわけです。これが視力を落とす重要な要因となります。
眼鏡で視力は回復するか
 軽い遠視や近視であれば、眼鏡を一時的に使用することによって裸眼視力が良くなり、眼鏡が不用になることがあります。
サングラスの使用について
 サングラスは光が強烈なときや、紫外線,赤外線が強い場所でのみ必要とされます。日本人は基本的に目に色素が多いので必要ありません。
 サングラスのレンズはJIS規格によって保証されたものを選んで下さい。色むらや微妙な凹凸は目に思わぬ悪影響を及ぼします。
姿勢が悪いと目を悪くする?
 姿勢にもいろいろあります。この中のデスクワークに関する姿勢に的を絞ってみます。
 一応、悪い姿勢で字を書いたり読んだりすると、少なからず目を悪くする要因に恵まれる結果となります。目を悪くする条件。
 1.環境) 体格に合わない机、椅子を使っている。照明が明る過ぎる、あるいは暗い、方向が悪いなど不適当な照明。
 2.貴方) 机の上に肘をついて読み書きする。正しくペンを持っていない。文字が小さい、薄い、正方形にほど遠い。
ディスプレイと目
 コンピュータのディスプレイと視覚に関する研究報告が皆無に等しい状態ですが、最近報告されたものをひとつ。
 キーボードのGキーとHキーの間をコンピュータのセンターとします。このセンターをまっすぐ見下ろせるようにコンピュータに向かって下さい。貴方がタッチセンス(キーを見ないで打つ方法。ブラインドタッチ。これに対してサイトセンス。)ならこれは重要です。なぜなら、長時間に渡った場合、仕事の能率と疲労の程度が格段に違ってくるからです。この位置で貴方の鼻とコンピュータのセンターとディスプレイのセンターが同一平面上にくるようにマシンを設定して下さい。
 余談になりますが、最近のコンピュータは400ライン/2000文字モードが普通ですから、解像度の良いディスプレイを使わないと目に大変な負担をかけてしまいます。解像度の高い14インチ以上のディスプレイを選んで下さい。
 水平位置は、プログラマーの目を通る水平線上に画面の上縁がくるようにし、その水平線に対して伏角15度前後に画面の中心がくるようにします。ディスプレイ自身も仰角15度前後をもたせるように設定します。
指圧
 これは簡単にできて有用です。目の回りを指で触ってみて下さい。眼球をぐるりと取り囲んでいる骨があるのがわかると思います。1)その骨の一番上、眉の下縁を指で触ってみて下さい。少しへこんでいると思います。そこを親指でキュッと押してみて下さい。他と違ってジワッと痛むようならそこがツボです。2)1のツボの5mm~10mmほど内側にも少し骨がへこんだ所(人によってはへこんでいない人もいる)があります。ここも親指で押すと痛みがひびきます。これもツボです。3)1のツボの下で骨の縁の下1cmほどの所です。眼鏡をかけていれば、眼鏡のフレームの下縁のあたる部分です。ここも押すと痛みが広がるツボです。いずれのツボもちょっと目が疲れたなと思ったときにでも、少し痛いくらいに押してみると効果があることがあります。
疲れないうちに休ませる
 実はこれが一番良いのです。でも、一番難しいんですよね。プログラミングやオペレーティングなど、ディスプレイに向かっているとついつい時間を忘れて取り組んでしまい、目を疲労させてしまっていることがよくあります。プログラマーやオペレータなどは、ついつい単調な画像を長く見てしまいがちです。ここでひとつ提案ですが、アラーム・ウォッチを用意して頂いて1時間毎にアラームが鳴るようにセットしておきます。そしてアラームが鳴ったらそれまでやっていた仕事を一時的に脳のスタックに退避させておきます。そこで目が疲れていないかチェックして、もし疲れていれば望遠訓練や指圧や階下のトイレに行くなどしてみるのもいいでしょうし、もしもあまり疲れていないようならば、パチパチと瞬きする程度で良いでしょう。とにかく以上のような割り込みを、一日の生活プログラムに加えてやってはいかがでしょうか。
 話は変わりますが、3D効果というのはあまり長時間見ない方が良いのではないかと思います。なぜなら3D効果というのはあくまでも効果なのであって、決して3Dではないからです。人間の脳は視覚においてあまりにも複雑なパターン認識を行っています。人間の脳は無限に複雑なパターン認識が可能なのです。しかし逆に見れば、それだけトリックに弱いのです(素直にだまされてしまう)。3D映像、そこまでいかなくても普通にみているTVドラマなど、立体認識機能(両眼視機能)の微調整を狂わすのに十分であるといえます。長時間の視聴はそういう意味でも注意を要します。
本当にテレビが悪い
 ペーパーウェアなどを打ち込む際、照明の光がディスプレイに写らないで、それでいて資料の方は十分に明るく見やすいというのはなかなか難しい環境条件です。しかしこれが満たされないと………。
結び
 目というのはたとえて言うと繊細なガラス細工のようなもので、ひとたび破壊されると二度と復元することはできません。しかし弱い歪程度ならなんとかなります。歪が小さいうちに必ず専門の医師に診断を受けて、適切な処置を施すようにして下さい。