零壱症候群特別講義(1)
コンピュータライフにあまり関係のない
酒呑み話
by 坂田 浩

 酒呑みが知らないであろう話や誰でも知っている話を、私が知っている範囲で書きましょう。


酒の成分

 一口に酒といいましてもその種類たるや古今東西数えるにあまりあるでしょう。こんな所にこんな変わった酒があるかないか、そんなことをここで論ずるつもりは毛頭ありません。最もポピュラーなアルコール飲料、例えばビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウイスキー、ブランデーなどの主な成分について簡単に紹介します

 酒の主成分はアルコールです。(水を除く。)そしてアルコールならなんでもよいというわけにはいかないのです。どうしてもエチルアルコールでなけりゃならないのです。なぜならエチルアルコール以外のアルコールは、毒性が強くて飲用に適さないどころか微量でも命にかかわるものさえあるからなのです。

 こんなエピソードがあります。あるときイタリアのワイン仲介業者がワインを1000本購入しました。これをただ売ったのでは面白くない。なんとか儲けたいと考えた彼は、これを一度樽にあけ、それに水を加えて見かけの量だけ増やして売ることを思いつきました。しかし、薄味のアメリカンですと言って売れるはずもなく、困っているところに彼の友達の運送屋が迷案?を教えてくれたのです。それは彼の運んでいる工業用のメチルアルコールを分けてやるということでした。彼はさっそくそれを樽に混入してアルコール濃度の水増し、いやアルコール増しをして、再びビン詰めした結果1400本にして売ったのでした。めでたし、めでたしのはずはなく、彼と彼の友達の運送屋はたちまち御用となったのでした。彼いわく、「アルコールならなんでもいいんじゃないんですか?」 運送屋いわく、「酒に混ぜると毒になるんですか?」


無知は恐い

 日本の教育水準では多分起こらないことだと思いますが、メチルアルコールの毒性については後述いたします。

 さて、日本では酒に含まれるエチルアルコール(以後、単にアルコール)の量を表わすのに、よく”度”という単位が用いられますが、これは温度15℃におけるアルコールの容量パーセントのことなのだそうです。自分がよく飲む酒のアルコール含有量ぐらい知っておきたいものですね。

ウイスキー シングルなら約13.5ccがアルコール
日本酒 銚子1本に約27.0cc
ビール 大ビン1本に約26.6cc

 酒は単なるアルコール水ではありません。わずかではありますが、いろいろな成分が含まれています。それを簡単に分類すると糖質、タンパク質、無機塩類、フーゼル油になります。

 糖質、タンパク質、無機塩類は蒸留酒にはまず含まれません。これらは主に”口あたり”に関与しており、いわゆる”こく”というのはフーゼル油に関係あるようです。


フーゼル油

 あまり聞かない名ですが、一体これは何なのでしょう。理化学辞典に依りますと、次のように記載してありました。

 「アルコール発酵の際、エチルアルコールに伴ってできる高級アルコールを主体とした混合物。イソアミルアルコール、活性アミルアルコール、イソブチルアルコールなどが主成分で、エステル、フルフラール、ピリジン、テルペンなどを含む。」

 有機化学を専門にしていない人には何のことだかチンプンカンプンでしょうが、わかる人には「こんなもの飲んでいるのか!」と思わず吐き気さえもよおしてしまうくらいです。フーゼル油には一般に匂いがあり、一度匂いをかぐと当分の間不快感に支配されてしまいます。また毒性も強く、一度身体に摂取されると蓄積性もあるため、より強く作用するのではないかと考えられます。

 興味のある方は自力で調べてみてください。とにかくアルコール飲料には、量にしてみると少ないでしょうけれども、必ずフーゼル油が混ざっているということです。一般にフーゼル油を多く含む酒は、つきの足りない米から造る日本酒、麦やとうもろこしなどから造る昔風のストレートのウイスキーなどです。次に一般的なフーゼル油の含有量を容量パーセンテージで示します。

ブランデー 0.3%
ウイスキー 0.03%
日本酒 0.05%
焼酎 0,07%

 ブランデーは新しいものほど多くフーゼル油を含んでおり、貯蔵が長いものほどその含有量は減っていきます。また、ウイスキーの場合は熟成の期間が長いものほどフーゼル油の含有量が増えているそうです。

 フーゼル油はその含有量が0.2%を越えると健康に害があるといわれています。その点からするとブランデーは古いもの、ウイスキーはあまり熟成させないうちに、日本酒は燗をして、焼酎はホットで………ということになります。「こく」のあるものよりは「あっさり」したものを………ということになりますか?!

Illustrate by Nikichi.

アルコールの吸収

 酒を飲んでしばらくするとだんだん酔いがまわってくる。いったい身体のどこからアルコールが吸収されているのでしょうか。

 すきっ腹に飲んだ酒はすぐに酔いがまわってくることは経験的に知っていることです。アルコールの消化酵素というのを聞いたことがありますか? 私はありません。アルコールは口から入ると消化されることなく身体に吸収されます。この点はブドウ糖と同じです。しかし、ブドウ糖よりももっと吸収の良い物質だということが知られています。

 酒を飲むとまず胃に一時貯められます。ここで約2割のアルコールが吸収されてしまいます。そして残りの8割のアルコールのすべてが腸で吸収されてしまいます。ブドウ糖やアミノ酸よりも吸収効率が良いくらいです。

 実はアルコールというのは身体のどこからでも吸収されるのです(皮膚は透過できないが)。そういうことですので、ダイレクトな酔い心地を楽しみたい人は注射器で皮下に注射してもアルコールは吸収されます。変態的に酔いたい人はカンチョウ器に酒を詰めて直腸に注入してやったり、導尿カテーテルで膀胱に注いでやったりしてもちゃんとアルコールは吸収されます。また酒に弱い人は、匂いを嗅いだだけで、つまり気化したアルコールが鼻の粘膜や肺胞粘膜を通して身体に進入して酔っぱらってくるはずです。


酒呑みあれこれ

 さて、「飲んだ酒に含まれるアルコール分のうち約2割が胃で吸収される。残り8割が腸で吸収される」というのは前述した通りです。では、これに要する時間はどのくらいでしょう。アルコールの濃度や食物の有無によって多少異なるようですが、1時間から2時間半ということです。ですから、血液中のアルコール濃度は30分から2時間くらいがピークになります。つまり、いちばん酔っている時間ということですね。ただし、チビリチビリと時間をかけて飲んでいる場合は別ですよ。

 空腹で飲むより何か食べた後、あるいは食べながら飲むと酔いがまわりにくい。このようなことは誰でも経験して知っています。しかし、これはすべての酒に当てはまることではないことは知っていますか? 経験は常に真ならじということでしょうか。アルコール濃度の高いウイスキーのような酒の場合、副食物の有無がアルコールの吸収速度に大きく関与します。しかし、アルコール濃度の低いビールのような酒の場合はほとんど関係が無いらしいのです。

  1. 空腹で飲む酒。この場合はアルコールの吸収を妨げるものが何も無いので、スムーズに早くアルコールの吸収が完了します。

  2. 副食物があり、アルコール濃度が高いウイスキーのような酒を飲む。この場合、いくらアルコール濃度が高くても、他の副食物と混じり合ってしまってアルコールが胃腸壁に接触吸収される率が低くなってしまいます。特に脂肪分に富んだ食物は吸収を遅らせます。

  3. 副食物があり、アルコール濃度の低いビールのような酒を飲む。ビールは通常大量に飲むため、副食物があってもそれをよけて胃腸壁に沿ってどんどん流れていってしまいます。つまり空腹で飲んだのと大差ないことになります。ただし、ウイスキーなどと同じように少量をチビリチビリと時間をかけて飲むのなら2.のようになるでしょうね。少量の酒で酔い心地を得たいときは、できるだけ空腹にして、アルコール濃度の高い酒を一気に飲むことです。

赤くなる人青くなる人

 「酒を飲んで顔が赤くなる人は酒に弱い人で、青くなる人は強い人。」ということをよく聞きますがこれは本当でしょうか。

 酒を飲んでほどなく酔いがまわりはじめます。つまり、血液中のアルコール濃度が高くなりはじめるのです。胃腸壁から吸収されたアルコールは、毛細血管から静脈を経て心臓に送られます。そして、心臓から全身にアルコールがばらまかれるのです。

 私などは酒を飲むとじきに心臓が早鐘のように打ちはじめます。ちなみに測定してみたところ、1分間に90回でした。、平常時は60回ですから、ちょっとした運動をしたくらいになっているのです。これは程度の差こそあれ、万人に共通した事実のようです。

 「アルコールは心臓にどう作用するか」、いや、本当のことを言えば「心臓を支配している神経にどう作用するか」なのですが。心臓は常に2種類の神経に支配されています。一つは働きを促進する神経で、もう一つは抑制をかける神経です。この2種類の神経が同時に、しかも反対の作用をもって働いてはじめて心臓がバランス良くコントロールされているのです。そこへアルコールがまわってくるとどうでしょうか。アルコールによってマヒさせられるのは心臓を抑制する神経が先で、促進する方はめっぽうアルコールに強いことがわかっています。つまり、「働け働け」と「休め休め」のバランスがとれていた心臓は、アルコールによって「働け働け」だけにされてしまい、ついには脈拍が増えるというわけなのです。(脈拍が増えるということは血圧が上がるということだと思っていて下さい。)

 身体の血管も心臓同様に促進と抑制の2種類の神経によってコントロールされています。促進の神経が働くと血管は収縮して細くなります。また、抑制の神経が働くと血管は拡張して太くなります。そして、これらの神経のアルコールに対する強さはというと、心臓のときのように決まったパターンがありません。ただ、促進させる神経が先にまいってしまえば血管は拡張して血液が多く流れるようになり、見た目に赤くなるのです。これとは逆に抑制する神経が先に酔っぱらってしまうと、血管は収縮して細くなり、その結果血液の流れが悪くなり、血の気がひいて青く見えるわけです。

 赤くなるか青くなるかは、「どちらの神経がアルコールに弱いか」ということであって、その人の酒の強さをあらわすものではないということです。ただし、前述したようにアルコールによって心臓の拍動は早くなり血圧は上がります。そこへいくと赤くなる人は安心です。だって血管が太くなるのですから、血液が流れやすくなって血圧は下がる。つまり、プラスマイナスゼロというわけです。これに対して青くなる人は血圧が上がるところにもってきて血管が細く流れにくくなるのですから、血圧は上がる一方。酒を飲んだあげくに脳卒中を起こしてバタンキュウ。生き残っても半身マヒ。くれぐれも青くなる人は深酒には注意!


アルコールの行方

 さて、身体に取り込まれたアルコールはどうなるのでしょうか。まず第一にそのまま体外に出るものがあります。摂取したアルコールの5%前後がおしっこ、あせ、なみだ、はなみず、つば、呼吸、おっぱい、ラブジュース、精液などに混じって出ます。アルコールはどこからでも吸収されるように、どこからでも出てくるのです。残り95%は分解されて水と二酸化炭素になって出ます。一部、生合成といって脂肪やタンパク質や糖質になる場合もありますが、量としては僅かなものです。

 血液に混じったアルコールは肝臓で酢酸にまで分解されます。酢酸は血液に乗って全身に運ばれ、全身でよってたかって水と二酸化炭素にしてまいます。

 エチルアルコール ―> アセトルアルデヒド ―> 酢酸

 全身の酢酸を分解してしまう能力は肝臓のアルコールを分解する能力の比ではありません。したがって、アルコールの分解は肝臓の能力にかかっているわけです。私たちの肝臓の平均重量は1300gです。この肝臓には約1.3gのアルコール脱水素酵素(アルコールを分解する酵素)があり、これが目一杯働くと1時間で6g程度のアルコールが酸化(アセトルアルデヒドにする)できることがわかっています。

 具体的に書きますと、例えばビール大ビンを一本飲むと、アルコール26.6×0.789=20.9874gですから、このうち95%を肝臓で分解するとしても血液中からアルコールがなくなってしまうのに3時間半ぐらいかかってしまう計算になるんですよね。しかし、理論は理論で現実にはもっとかかるようです。

 肝臓の重さはある程度体重に比例して重くなるので、体重の重い人ほどアルコールを分解する能力があるということになります。ここでアル中にならない適量を次に示しましょう。

体重 (Kg) ビール 大ビン 日本酒 1合 ウイスキー シングル
40 1 1 2
50 2 2 3
60 2.5 2.5 5
70 3.5 3.5 7
80 5 5 10
90 7 7 15

 上の表は「毎日これ以上飲んでいるとアル中を含めて様々な障害を起こすかも知れない」という意味でアレンジされたもので、個人差もありますし、あくまで目安だということをおことわりしておきます。たまに大量に飲んだからどうだということはここでは問題にしていません。


ブルゴーニュ産ワイン

Illustrated by Ryo Ogahara.

ビールは太るか

 結論から言うと、ビールを含む酒だけでは決して太れない。逆にやせるくらいであることを知っておいてください。それではなぜ、ビール腹などという言葉があるのでしょうか。女性にはあまりビール腹は見あたりません。女性にあるのは「全身ビヤ樽」なのであって、たまにビール腹のような女性がいたとしても、それはビール腹なのではなくて妊娠腹に違いありません。

 女性のホルモンバランスでは、過剰になった栄養分は脂肪に変えられ、そのほとんどが全身の皮下に貯められます。ところが、男性ホルモンバランスでは余った脂肪は皮下には行かず、臓器脂肪と言って心臓、胃腸、肝臓などの内臓の中やそのまわりに沈着してしまうのです。だから、男のデブは手足の割には「腹デブ」になってしまうわけです。

 さて、話を元に戻しましょう。アルコールというのはある程度はアペタイザー、つまり食欲増進剤としての働きを持っています。よく観察してみてください。ビール腹の人は何だかんだと言って、酒を呑みながら、あるいは後で食べること食べること。太らないわけはありません。

 また「食べながらの酒は悪酔いしない」などと言って、これまた食べることといったら、人のつまみまで取っていく奴がいる。(これは単にイジきたないだけ。)ですから、酒で太るというのは一応ウソなのです。ですが、酒はある程度の食欲増進剤になることは確かです。それをよいことにして食いイジを張っていると結果は単なるデブ。男はビール腹、女はビヤ樽。いずれも食べ過ぎです。


酔うと騒ぎたくなる

 呑むと騒ぐ奴、笑う奴、泣く奴、怒る奴、寝る奴、からむ奴、落ち込む奴………いろいろな姿が見られる。私はあるとき、コンパしている連中に「なんで酒を呑むのか」「呑まなきゃいけないのか」などとインタビューしている報道番組を見たことがあります。彼らは一応にこう答えるようです。

 「呑んで騒ぎたいのさ。呑むと、ホラッ、いろいろとほぐれるというか、普段言えないことが言えるというか、呑んだ勢いもあって………とにかく親睦が深められるんですよ。」

 私はこの意見にどうこういうつもりは毛頭ないのです。ただ、アルコールには薬理的にそういう作用があるかどうかをここで考えたいのです。

 アルコールの生体に及ぼす作用は麻酔、鎮静、抑制です。どこにも興奮とか、刺激とか、覚醒といった効果はありません。しかし、私たちは呑んで騒ぎます。これはいったいどういうことなのでしょうか。

 既に、「呑むと心臓は早く打つようになる」と述べました。この理由を思い出してください。2つの神経があって、アルコールに対する強さが異なるということでしたね。これと同じようなことが大脳レベルでも起こっていると考えられているのです。しかし、こればかりは人間の人間らしいところですから、他の実験動物で調べるわけにはいきませんので、あくまでも推察の領域を出ないのですが………。

 大脳レベルでは、いわゆる抑制であるとか、理性にコントロールされる部分が先にアルコールによってその働きを抑えられているのではないか、そしてその結果、それまで抑制されていた、理性でコントロールされていた部分が活動を開始するのではないかと考えられています。しかし、これは血液中のアルコール濃度がそれほど多くないときだけで、深酒をして血液中のアルコール濃度が増すとすべての生体的活動が停止してしまい、生体は死んでしまうのです。眠くなったらカラータイマーが点滅していると思って控えめに。寝ている奴はそのまま寝かしておきましょう。

 以上は「酔った勢い」に対する一般的理屈です。しかし、私はこれだけではないのではないかと考えています。確かにアルコールによって、大脳レベルにおいても酔いやすいところと酔いにくいところがあるのでしょう。それはその通りだと思うのですが、はたして理性が先に酔うのでしょうか。

 私はあるとき宴会の幹事をしていて「決して酔ってはいけない」と思いながらも呑んだことがありました。結果は見事にしらふでした。いや、足元にはきていましたが、幹事としての役目はちゃんと勤めることができたのです。

 こういう事実からすると、ある程度は酔いを意思でコントロールすることができるのではないでしょうか。「呑んで騒ぎたい」と思って呑むから酔う。そして………になる。でも、これでいいんではないのかなっ?!呑んで難しいことを言う奴はオレはドワーイキライです。そんな奴はどんどん呑ませて寝かしてしまおう!


メタノールは猛毒

 あなたが普段召し上がっていらっしゃる酒に含まれているアルコールはエタノール(エチルアルコール、酒精ともいう)。これは一度に大量に飲まない限り大丈夫。心地良い酔いをあなたに与えてくれます。これに対して工業用に多く使われるのがメタノール(メチルアルコール、木精ともいう)。これは危ない。確かに酔い心地も得られるには得られるらしいのですが、酔いから覚めたときには失明………いえ、永久に目覚めることすらないかもしれません。

 ある報告によると、メタノールによる酔いはエタノールのものに比べると悪酔いした感じが強い、酔いから覚めるのにかなり時間がかかる、すぐ舌や足がもつれる、などとなっています。

 密造酒が出回っていた、むかーしとは違って、現代の日本ではあまり縁のない話かも知れませんが、知識として知っていても損はないでしょう。


酒は眉薬?!

あはん・・・私、酔っちゃったみたい・・・ 古来、ある種の酒は眉薬として珍重されてきています。さて、これからは私の個人的見解を書かしていただきましょう。異論のある方、眉薬を珍重していらっしゃる方もあるかも知れませんが、私はこう考えます。「酒は気持ちをほぐしてもSEXを強くはしない。」

 論1: 少量のアルコールは体や心理的緊張をほぐし、リラックスさせるでしょう。ところがこのリラックスが曲者。さて色々と想像をめぐらせてほしいのです。酒を飲んでだまりこくっている手はありません。少し軽くなった口からはウィットに富んだ会話が生まれる。はずむ会話の中からは、思いもよらぬ新しい面を相手に見出したりして、それが新鮮な魅力となって感じられ、突然素敵なパートナーに思えてきはじめる。

 つい手も軽くなったりして………これは程度問題ですが。いずれにしても、興味というか動機づけというか、人間は関心を持つと俄然違ってくるものです。

 「ほんのり酔い」の状態では意外にダイナミックなバイブレーションが生まれたりする。これが新たなる快感を導いたりする。また新しい体位を可能にしたりもする。そして、新天地を迎えるかも知れないのです。

 論2: 中量の酒。心理的にはかなりの解放感を与えてくれるでしょう。でも身体がついてくるでしょうか。リラックスを通り越してしまった肉体には、もはや繊細な感受性も統合された動きも得られないでしょうから。

 論3: 大量の酒。もはや勃起もしなければ濡れもしない。


酒呑みと仕事

 酒を飲むと仕事の能率にどのような影響を与えるでしょうか。能率は上がるか下がるか。単に仕事といっても様々です。肉体労働もあれば知的労働もある。単純労働もあれば複雑労働もある。そこで仕事の内容によってアルコールはどの程度影響するか考えてみましょう。

データ1:粗大な肉体労働。この手の作業の場合、かなり飲まなければ影響はないでしょう。

データ2:複雑な肉体労働。タイピストなどがこれに当たるでしょう。この場合、少量のアルコールでも作業量を低下、かつ正確さも低下させるでしょう。

データ3:知的労働。やはりアルコールは少量であっても能率の低下を招き、判断力にも影響を与えるでしょうね。

 アルコールは身体に、特に神経に作用してその能力を麻痺させる物質ですから、神経的精神的な色合いの強い仕事ほど強くその能率に影響を与えてくるでしょう。ところが、詩人、芸術家、作家などに慢性的な飲酒者がいることも事実です。こういう人たちは多分、アルコールによって脳を半ばマヒさせることによって緊張をほぐし、リラキシゼイションした状態で常識にとらわれないアイデアを導くのでしょう。

 ゲームのストーリーやプログラムアイデアなどは、酒を飲んだ方がよい知恵が思い浮かぶかも知れませんが、実際のプログラミングとなると知識と集中力の粋をこらすわけですから、やはりノンアルコールでしょうね。


山頂でいっぱい・・・・気圧と酔い

 酔いに気圧が関係あるのかって?それが大いに関係あるのです。結論から先に述べましょう。「気圧が低いほど酔う。高いほど早く覚める。」

 これはいったいなぜでしょうか。アルコールの分解過程を思い浮かべてみてください。体内に摂取されたアルコールは肝臓でどんどん処理されていきます。そしてどんどん酸素を消費して、ついには水と二酸化炭素にまで分解されて体外に排出されます。もうわかったでしょう。そうですアルコールを分解するのに大量の酸素が必要になってくるのです。このとき使用される酸素は呼吸によって摂取されますが、もし空気中の酸素濃度が少なかったら………当然、身体に取り込まれる酸素の量は減少します。したがってアルコールの処理に使用される酸素が減って、結果的には酔いが深く長くなってしまうのです。

 今日はちょうど低気圧が来ているから、酒が少なくて済む………かどうかは保証できかねますが、立山の頂上ならそうでしょうね。


精力剤は効くか

 精力剤の成分表を見てください。そのほとんどの商品にアルコールが使われています。嘘じゃありませんよ。アルコールと書かずにワインと銘記してあるのも私は見ました。

 少量のアルコールの効果は媚薬の項でも説明したのでここでは省略します。ただ気に留めてほしいのは、運転中に飲んでいる物にもアルコールが含まれていることがおおいにあるということなんですよ。

 ある報告によると、精力剤を飲んだ後の一瞬の反射というか判断力は、正常時の10~20%減だとか。1%のアルコール水でも一瞬の反射には影響するのです。


あぁ勘違い

 何年か前のことです。確かNHKのニュースだったでしょうか、「ある酒造メーカーが粉末の日本酒を造ることに成功した。そして、特約的に販売してみたい………。」多分このような内容だったでしょう。私、このニュースを見て、是非とも機会があれば味わってみたいものだと思っていました。

 そして昨年、「ドライビール新発売!」と聞いて、いよいよビールも粉末になったんだなぁと思いました。これだけの話です。


酔い、二日酔い

 お酒を飲んでいるうちに次第に頭痛がしたり、ひどく目が回ったり、とにかく気持ち悪くなってくる場合、これは悪酔いです。それとはちがって二日酔いというのは、気持ち悪いには悪いんですが、それがお酒を飲んだ翌朝になって出てくるもののことです。経験した人はよくわかるでしょうけど、どちらもいやなものです。しかし「それでも人は酒を呑む」のはなぜでしょうか。………私にはわかりません。誰かわかりますか?

 医学的にも悪酔いと二日酔いは分ける傾向にあります。悪酔いとは酒を飲みはじめてから2~6時間後に不快感に襲われるもの。二日酔いとは同じような不快感が10時間以上経過してから出てくるもの。大体こんなものです。

 さて時間的差異については理解していただけただろうと思います。なぜこのように不快になってしまうのか、今のところはっきりしたことはわかっていません。以前に「フーゼル油がその原因ではないか」という考え方がありました。前述の通りフーゼル油というのは酒に含まれる分子量の大きな毒性のあるアルコール類のことです。しかし、酒に含まれる0.1%程度のフーゼル油だけでは、あの不快感を説明することはどうも困難なのです。

 体内に摂取されたエチルアルコールは肝臓でアルコール分解酵素の作用を受けてアセトルアルデヒドという物質になります。次にアルデヒド分解酵素によって酢酸に変化し、その後は全身よってたかって水と二酸化炭素にまで分解して体外に排出します。

 これがアルコールの分解過程ですが、この中でアセトルアルデヒドというのがありましたね。最近ではこれがあの不快感の犯人だと確証されつつあります。

 アセトルアルデヒドは大変毒性の強い物質で、脳の神経にとってはエチルアルコールの約200倍の毒性をもって作用するとも言われています。「一気、一気!!」とバカ呑みすると、アルコールの分解をあせった肝臓ががんばればがんばるほど、アセトルアルデヒドが蓄積する結果となって、ついには急性アルコール中毒から死となるわけです。


フーゼル油はどう変わるか

 アルコールからアルデヒド、アルデヒドから酢酸、酢酸からTCA回路を経て水と二酸化炭素。このうち2番目のアルデヒドの分解酵素を阻害するのがフーゼル油です。言ってみれば酵素作用を邪魔する暴力団みたいなものです。


悪酔いしないでも二日酔いする

 エチルアルコールの神経に対する作用は“鎮静”です。これとは逆にアセトルアルデヒドのそれは“刺激”です。

 脳内にエチルアルコールとアセトルアルデヒドが存在するとき、アセトルアルデヒドは脳を刺激して不快感を起こそうとしますが、これをエチルアルコールは阻害しようとします。つまりアセトルアルデヒドの毒性よりもエチルアルコールの緩衝作用が強ければ悪酔いは起きません。しかし、次第に両者とも代謝されていきます。飲んだ量がある程度多いとアルデヒドの蓄積が起きてきて、アルコールはだんだんとアルデヒドを抑えきれなくなり、ついに翌朝の不快感となるのです。


チル チル メチル

 目が散るからメチルなんて冗談です。メチルの毒性の本質はその代謝経路にあります。メチルもやはりエチルと同じような経路で代謝され、最後には水と二酸化炭素になって排出されます。ここで大切なのはメチルはアルコール分解酵素の作用を受け、ホルマリン(ホルムアルデヒド水)に変わってしまうことにあります。ホルマリンの毒性は知っている方が多いでしょうが、生体内においてはタンパク凝固物質として強力に作用します。メチルを飲むとどうなるかは推して知るべし。


ちゃんぽん

 「ちゃんぽんは悪酔いしやすい」とよく言います。はたして「ちゃんぽん=悪酔い」と決めつけたものではないとは思いますが、関係無いとも言い切れないところです。ある文献によると次のような内容が記載してありました。

 まずなんと言っても、ちゃんぽんする飲み方は飲み過ぎやすいことです。風味が変わるため、つい度を越してしまいがちのようです。それに段々と刺激の強い、つまりこくのある、あるいはアルコールの強い酒になっていく傾向もあるのではないかというのです。

 酒の種類によって含有するフーゼル油の種類やパーセンテージが変わってきます。フーゼル油そのものに毒性があり、またアルデヒドの分解を阻害して悪酔いを助長する物質だと先に述べましたね。ちゃんぽんすることによって多種類のフーゼル油を多く摂取しやすくなることは言わずもがなです。

 副食物は胃腸からのアルコール吸収を遅らせることを理解していますね。ちゃんぽんすると、副食物の摂取をついおろそかにするのではないでしょうか。

 やはりなんと言ってもちゃんぽんは飲み過ぎのもとです。飲み過ぎは悪酔い二日酔いのもとですね。


vs悪酔い作戦

 呑まない。エッ?!これは無理ですか……

BEFORE DRINK

  ◎ビタミンC,Eなどのビタミン剤や肝臓の働きを促進する薬剤を飲む。

  ◎胃腸の働きを調整しておく。胃腸障害は直しておくこと。

  ◎高タンパク、高脂肪のハイカロリー食を摂る。

DRINKING

  ◎副食物は欠かさない。ただし胃腸に負担の大きい繊維質、塩からいものはダメ。

  ◎背中を丸めない。これは酸素をたくさん取り入れるため。深呼吸はよい。

  ◎ペースを考えること。一気呑みなどは人に勧めても自分はしないこと。

  ◎エネルギー源として糖分の補給も大切。甘辛両刀使いになろう。

  ◎しょんべんはこまめに。新鮮な空気を吸ってくる目的もある。

  ◎ちゃんぽんは気をつけよう。強い酒もです。

  ◎タバコも吸い過ぎなければ良いと思う。

 気持ち良く呑みたいものです。

AFTER DRINK

  ◎新鮮な空気を吸おう。呼気からもアルコールは出ていくのだ。

  ◎胃腸に負担はかけない。お茶漬けさらさらはダメ。

  ◎蜂蜜のお湯割りやポカリスェットなどを飲もう。

  ◎吐き気があったら迷わず吐いておこう。


酒に強くなる

 肝臓にアルコールをアルデヒドに分解するアルコール脱水素分解酵素があります。この量は1.3gとほぼ決まっていて、訓練効果はありません。つまり飲みつけたからといって酵素は増えたりはしないということです。残念です。

 しかし、アルデヒドから水と二酸化炭素に至るまでの経路については訓練効果がある程度あるようなのです。ですから、飲みつけることでアルコールの蓄積はあっても、アルデヒドの蓄積はコントロールできそうだということになります。

 胃腸、体調、精神状態を整え体力増進を図ることで訓練効果をより高めることができそうです。がんばりましょう。


頭がだんだん軽くなる

 度を越して酒を飲み続けるといったいどうなるのでしょうか。「慢性アルコール中毒」になります。こんな至極当然な話はここではしません。

 集合A:ほとんど酒をたしなまなかった人。集合B:かなり飲み続けた人。この両群で比較してみると、その脳の重さ(死体解剖の結果)に確かな差を認めることができるのだそうです。イギリスの大学での研究だったと記憶しています。

 A群の平均の脳の重さが約1400gでB群では約1300gだったとか………。比較としては「下戸かアル中か」とかなり極端ですが、慢性的な飲酒はかなり脳に影響あるみたいです。


休肝日

 毎日清酒3合で40年、毎日清酒5合で20年、毎日ボトル半分で10年、毎日ボトル1本で5年。これは「こんなに飲んでいるとアルコール性の肝臓障害を起こすぞ」という目安です。もし、万が一アルコール性肝障害になったら速やかに酒を絶ちましょう。たちどころに肝臓は元気になることでしょう。

 もし、それにも関わらず飲酒を続ければ、肝炎~肝硬変~肝癌~死、となるでしょう。そうならないための「酒を楽しみながらの予防法」は休肝日です。

 休肝日というのは読んで字のごとく肝臓を休める日のことです。飲酒の量にもよりますが、最低週に1日はノンアルコールの日にしましょう。できない人は死にましょう。

 ちなみに休肝日には最近流行のカウチポテトなんかしてみたらどうですか。ソファーにくつろいでポテトなんかつまんでビデオを鑑賞する。飲むのは当然、ノンアルコールです。いかがですか。


THE END

 なお、文献の勝手な解釈と個人的な意見をもとに独断と偏見に満ち満ちていることのどこが悪いんだ?!俺は酔ってなんかいないぞ!!………おやすみなさい。