絵夢絶党名物 リレー式長期連載小説
連続銀河大河小説
第1回から第3回まで

 西暦現在+α、A国の国立極秘研究所では秘密裏のうちに恐ろしい計画が進行していた。その計画とは瞬間物質転送装置を使って対立国であるB国の軍幹部を消し去り、最終的には地球を征服しようというものである。この研究所はその装置の製作から計画の企画までのすべてを行っているのだ。

 「所長。装置が完成しました。」

 「ミスがないか調べろ!」「よし、テストしている暇はない。直ちに計画に移る。」

 「本部へホットライン。国防長官殿、プロジェクトAを実行します。」

 「許可する。」「まずはB国空軍の長官から抹殺する。目的地をケンタウルス群α星へ。周波数を標的に合わせろ。」

 「了解。」「セット完了。プロジェクトA、スタート3秒前、2、1………」

 

 ここはある国のど田舎。ひとりの青年が日課の畑仕事をしていた。彼の名は浅田敏弘24歳独身であった。

 「今日も暑いなぁ」

彼が抜けるような青空に目をやったとき、何かが彼の体を通り抜けたような感覚に襲われ、次の瞬間気を失った。

 

 「所長! プロジェクトA失敗です。もう世界にあと3個しか残っていないZ−80が熱暴走しました。」

 「なんだと? あれほど作動させるときはうちわで扇げと言っておいたのに………」

 「所長、大変です。方向決定用コンピュータのMZ−80Kが故障しています。」

 「何? あれは世界に2つとないのだぞ!せっかく私が組み立てたのに………。」

 「所長。B国空軍の長官が生存していることが判明しました。」

 「国防長官にホットラインだ。−−−−長官。プロジェクトA失敗しました。修復不能です………。」

 『ご苦労だった。』

こう短く言い残すと長官は、研究所にICBMをぶち込んだ。

以上 新明 


何か眩しいものを感じて目が醒めた。ひどく長い間眠っていたような気がする。まだ重い瞼で辺りを見回すと、どうやらそこは森の中らしい。

 「いっ、いかん!」

彼は重要なことを思い出した。

 「うわっ! はっ早く二十日こんにゃく芋の苗を植えないと………」

 しかし、そこは彼がまだ見たこともない土地であり、到底彼には帰る術など無い。

 

 いつまでもこんなところに寝そべっているわけにはいかない。兎に角、彼は人を捜してここが何処か聞き出そうと思った。

 

 広い森である。もうかれこれ3時間は歩いている。腹も減る。喉も渇く。

 しかし妙な森である。見たこともないような、まるであじましでおの絵のような植物ばかりである。

 ふと、彼は生理現象に襲われた。

 「うっ………」

そそくさと、彼はある1本の木の根元で用を足そうとした………。

 

 「のわ〜〜〜ぁぁ!! なんじゃこりゃあぁぁぁ〜〜!!!」

壮絶な叫び声を彼はあげた。

 「ないっ、ないっ!」

何処へ遊びに行ったのか、彼の大切な一人息子が消息を絶っていた。と同時に、彼は自己の身体の大きな変化にやっと気がついた。

 「胸がある!」

だいたい1m80cmもあった身長が、20cm近く縮んでいる。

 『悪い夢だ』    

彼、いや彼女は思った。

 『そうだ。ここで用を足すと、朝、布団が濡れることになるんだ。はっはっ、だまされるものか!』

 彼は必死で自分を目覚めさせようとした。つねった。叩いた。くすぐった。しばいた。が、努力も虚しく、彼女は彼女のままである。

 彼女は諦めた。第一、ぼーこーが限界を越えていた。彼女はその場にしゃがみ込み、生まれて初めての経験をした。

 

     賢明な読者は既におわかりであろう。すべてMZ80Kの仕業である。

 所長は Mass-Transporter(以後M.T.)の末端タスクにZ−80及びMZ−80Kを使用したが、これがいけなかった。処理速度アップのために、2.5MHzのZ−80を4MHzで使用していたのである。ブロワーを設置しなかったため熱暴走したのだ。

 しかし、これが何故、浅田敏弘24歳独身を女性にし、妙な森へトランスポートしたのか………。

 このM.T.は被転送物を立体走査し、原子レベルでシグナルに置き換え、ウルトラγ波に乗せて転送するという、SFではお馴染みの方式を採用している。(被転送物は、転送完了確認後反粒子波で消滅させる。)今回のZ−80の罪の無い暴走により、浅田敏弘24歳独身の身体は、Z−80の好みかどうかは知らないが、とある女性のものとなったわけである。     

 

 彼女はわけのわからないままに森の出口を求めてさまよっていた。と、前方が明るくなってきた。

 「やった。出口に違いないわ!」

彼女は足を速めた。

 

 彼女は小高い丘陵の上に立っており、眼下には大きな都市が広がっていた。

 「町だ!人がいる!食い物も水も!」

無我夢中で彼女は駆け出した。

 

 町に入ったときにはもう日も暮れかかっていた。見慣れない格好の人々が大勢歩いている。

 「あのぅ、すみません。ここ、何処なんですか?」

少し考えてから尋ねればいいのに、御推察通り、彼女は誰にも相手にしてもらえない。彼女が必死になればなるほど………。男物の作業服を着た娘が、手当り次第に馬鹿なことを聞いて回っているのであるから、当然といえば当然であるが。

 

 どうでもいいが腹が減った。女になってから半日以上何も食べていない。

 彼女は一軒の食堂の前で足を止めた。

 「しまった! 金が無い!」

野良仕事に財布を持って出る奴は珍しい。しばらく彼女は考えた。

 「こうなりゃ作るしかない。幸い俺は女だ!」

 

 開き直った空腹の女と、あったかいご飯にたれた鼻血ほど恐いものはない。

 彼女は裏通りへと足を向けた………。

以上 杉原 



 『しばらく来ないうちにここも随分変わってしまった。』と彼は思った。

 『地球からの補給が来る度に入り組んできている。』

 彼は人目を気にしながら狭い路地へと入って行った。

 ふと、一人の風変りな身なりをした女性がいる。瞬間、彼の胸は『キュン!』と高鳴った。彼の初恋の女性にそっくりなのである。壁に背をもたれて伏し目がちにしているその子と目が合うと、『にこっ』と笑いかけられて思わず鼻の下が伸びたのだった。

 『いくらだろうか。高いかも知れない。』

………彼は思った。 

 

 「やあ、β星は今も綺麗だね」

 「……………」

彼女は小首をかしげている。

 『ここ流の挨拶を知らないところを見ると、別の星系からの移民者だろう。』

 「こんにちは」

と彼女はまたかわいく笑った。誰も彼女がついさっきまで男だったとは信じないだろう。彼女が女になったのはZ−80の暴走のせいだけではなさそうである。

 彼は彼女のそばに近寄り、軽く肩に手をかけて尋ねた。

 「いくらかな?」

彼女はポッと頬を赤らめた。彼は思った。 『うん。きっとこの子は私を好いているに違いない!』

 「さあ、行こうか。」

………しかし彼は、彼女が心の中で『しめしめ、うまくひっかかったぞ』と舌を出しているのには無論気付かなかった。それにしても彼女にとって気がかりなのは、地球にそのまま残してきた農作物であった。それに加えて、やたらとおなかが減っている。

 「ピルルル…………」 

と彼のつけていたトーキー(携帯無線)が鳴り響いた。

 「所長! 大変です! マザーコンピュータのMZ−80Cのデータによると、この星全体に空間の歪が発生しています。このまま行くと………この惑星は内部より崩壊してしまいます。」

 「なんだと! う〜ん、この大事なときに………わかった。いますぐに行く。」

 『め、めしのたねが〜〜』

と慌てた彼女は言った。

 「あ、あのぉ………私、この星のことまだわからないんですぅ。一緒に行っていいですか?」

 「うっ、う〜ん………。まあ、いいだろう。」

 『本格的に俺に惚れているな。まあ、それらしい服は着ていないし、誰もいかがわしい女だとは思わんだろう。』

 彼は雑草の“ぬとぬとーる”や“ろひーぶの”に足をとられながらも、お手てつないで研究所まで走ったのであった。そう。彼こそこのα星一番の物理科学者であり、またα教の宗主でもあるチーラ所長その人である。まあ所長といってもまだ彼はとても若く、研究やその他もろもろに励んでいるのである。

 「これです。」 

 「う〜む、確かに空間が歪んでいる。M.T.の暴走だ。」

 「はい。地球方向からのエネルギー放射をキャッチしました。そのすぐ後でこのようになったのです。」

 こじんまりとしたその本体のコンピュータには、いかにも研究所といった改造が施してある。画面には時折、というよりはやたらとノイズが乗っている。彼女、いや敏弘、いや敏子はまじまじとそのコンピュータを眺めた。

 「いや〜調子が悪いなぁ。」

と言って、チーラ所長はコンピュータの横をコンコンとつついた。画面が正常に戻った………と思った瞬間、わけのわからないキャラクタで埋め尽くされた。

 「いかん! うちわだ、うちわ!!」

と言っているうちに、白い煙がもくもくと昇ってきた。

 「どっ、どうすればいいんだ!」

チーラ所長は愛人が交通事故にでもあったようなうろたえぶりである。

 「わたしにまかせて!(かわいい声で)」と敏子は近くにあったハンダごてとニッパを握りしめ、コンピュータの蓋を開けた。

………果してケンタウルスα星は崩壊の危機を乗り越えることができるのか。頑張れ敏子! 運命は君の手の中にある……………

以上 大井 


 
これが絵夢絶党名物、連続大河小説の第1回〜3回である。現在に至って十数回を数えている。しかし6〜7回を迎える頃からライターが話の筋を完全に把握することができなくなり、矛盾や勘違いが続発するようになってきた。同一人物を別人物のつもりで話を進めたり、いたずらに何人も登場人物を増やしたりして収拾がつかなくなったりと、現在では誰が見ても支離滅裂になってしまっている。ここに紹介したのはそういった問題が起こる前の比較的まともな部分である。(編)