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 平成14年
by 杉之原名人

 先日、これまで使用していたカラーインクジェットプリンタの印字品質が改善されなくなったので、久々に新しいプリンタを買ってきました。

 今、プリンタと言えば銀塩写真と見まごうばかりのカラー高印字品質がウリのもの(主に一般家庭向け)と、高速なモノクロレーザープリンタ(主にオフィス向け)とに分かれているようです。ところが、私のように自宅SOHOでコンピュータを使っていると、この二極化はありがたくありません。仕事でカラー印字をすることは、プレゼン用資料を作成する以外にはまずありませんが、趣味・家庭用途としてはデジカメプリントや子供の描いたCGのプリントアウト、HPサービスチケットなどの印字など、カラー印刷を必要とする場合が多いからです。もちろん、2台買うという手もありますが、設置スペースや価格の面からも避けたいところです。つまり平成14年現在、私が欲しいプリンタは、モノクロ印刷が高速で、カラー印刷も写真画質で、耐久性が高く、ランニングコストが低く、ブートアップが高速で、できるだけ安価なもの、ということになります。「そんなの誰でも同じじゃん?!」とツッ込まれそうですが、この基本的欲求を忘れることなく機種選定に望むことが、意外と忘れられているように思うのです。

 テレビでもカラープリンタのCMが流れています。E社もC社も写真画質を謳い、高級機では本当に銀塩写真と見分けがつきません。驚くべき技術だと思います。でも、これっていいことずくめではないのです。

  1. まず印字速度。ごく最近では高速性を備えた高級機も登場しているようですが、スタンダードな価格帯のものはどれもかなり時間がかかります。私がこれまで使用していたE社のPM-2000Cなどは、A4サイズで写真印刷しようものなら軽く10分以上待たされました。おまけにCPUの負担も重いらしく、同時に作業するには差し障りを感じていました。

  2. 次にメンテナンスの問題。解像度が高いということはノズルが小さいということ。つまりは目詰まりの可能性が高いわけです。C社は高速化のため、このノズルの数を一気に増やすという力業に出ましたが、何百個もある小さなノズルのことを考えると、ベストな状態で印刷できる期間はどれくらいだろうか?などと思ってしまいます。もちもんメーカーもそれはわかっていて、起動するごとに念入りにインクを使ってノズルヘッドの掃除をするようになっているようです。私もしょっちゅう目詰まりに見舞われ、このクリーニング作業を繰り返し、驚くほど早くインクを消耗していたものです。

  3. とどめがランニングコスト。高級機はインクタンク独立をウリにしていますが、その分だけ本体価格が高く、一般向けには意味を成していません。低価格機にこそ取り入れるスペックではないでしょうか。また、まとめて大量に印刷することが多いのであればよいのですが、こまめに使用していると、クリーニング作業でインクを浪費し、カタログスペックとはほど遠いランニングコストになってしまいます。6色、7色というインクは、それだけで安価なプリンタ本体の価格に匹敵します。

 以上の点は忘れることなく、考慮しておく必要があるでしょう。でも「デジカメとプリンタでフィルム&現像要らずにしたい」という用途には問題ないですね。印字が遅くても、ほとんどの場合は現像に出すよりは早いでしょうし、まとめ印刷が基本ですし、価格的にも遜色はないと思われますから。現状はこのような用途が多いのかもしれません。

 仕事で使う場合に重要なのはモノクロ印刷です。文字や罫線がくっきりと見え、速度が速いこと。また、モノクロ印刷に限らず、使い勝手の良さも大きなファクターです。用紙の追加・交換が容易か?電源ONからどれくらいの時間で印刷可能になるか?設置スペースは?インクの交換は楽か?などなど。各社独自の工夫を凝らしているようですが、結局はそのバランスが個性となり、選択の最大のポイントになってくるのです。

 以上を踏まえて。今回私が選択したプリンタはHP(ヒューレット・パッカード)社のdeskjet990cxiという機種です。新機種ではないので価格もこなれていて、2万5千円弱(税込み)で買えました(定価\57,800)。実はメーカーは以前からほぼ決めていたのです。とある事務所の仕事をしたときにそこにあったのがHP社のプリンタでした。安っぽいなりとは裏腹に、我が目を疑う高速印刷をやってのけ、とても扱いやすかったからです。E社とC社のプリンタしか買ったことのない私には衝撃的でした。ちなみに私はこれまでFP-80(E)->VP-130(E)->VP-135(E)->AR-2410(Star精密)->BJ-330(C)->PM-2000C(E)という順でプリンタを使ってきましたが、HPのプリンタは国外メーカーということもあってか使用感が独特です(以下に解説)

  1. HP deskjet 990cxi印字音が不思議。私の中ではドットインパクトプリンタは『ギャーン、ジャーン!』とけたたましく、インク(バブル)ジェットは『ウィーン、イーン!』とモーターの音がするもの、という認識でした。が、HPの990cxiでは、『シュー、シューッ』と紙の擦れるような音しかしません。音、しなさ過ぎです。静かなのも過ぎると欠点になりかねません。

  2. 用紙は前面下段にセット。なんかレーザープリンタっぽいです。でも、用紙の交換や追加はとても楽で、設置スペースも非常にコンパクトです。が、厚手の用紙だとうまくフィードできるのかどうか心配です。いちおう官製葉書は専用トレイを使用して問題なく印刷できたので、それほど問題にはならないようです。

  3. 今どき4色インク、おまけにヘッド付き。黒+赤黄緑の計4色。これで写真画質を謳うところが大胆です。しかし、実際に印刷してみると、これまで使っていた6色インクのものに優るとも劣りません。2400ppiという高解像度がミソのようです。ただ、明るい写真を印刷すると粒状感が出るのは仕方なさそうです。また、C社名機のBJ-10/15のようにインクと印字ヘッドが一体となっています。はっきり言って「安っぽい」感じがします。当然、インクカートリッジは黒で実売\3500、カラー3色で\4000弱と、かなり高価です。ランニングコストが心配になりますが、その分インクタンクが大きく、他社に比べて高くなることはないとのこと。これはメーカーが言っていることですからアテにできませんが、実際のインク量からいっても大嘘ではないようです。それに、ヘッド一体型ゆえに、万一目詰まりしてもインク交換するだけでOKという安心感は大きいものがあります。

  4. え?もう使えるの?!プリンタの電源ONから印刷可能になるまでの時間が1秒です。ドットインパクトより短いとは恐れ入ります。クリーニングが不要な設計なのですね。ある意味究極です。

  5. 両面印刷ユニット両面印刷機能付き。ランニングコストにも少々寄与しますが、それ以前にこれが当たり前のようにできることは、資料の打ち出しなどには多大な恩恵をもたらします。100頁のpdfを印刷しても、用紙は50枚。資料に囲まれて仕事をする人々にとって、ドキュメントの嵩が半分になることがどれだけ嬉しいことか。これまで、奇数ページを印刷してから偶数ページを印刷するなどして対処していましたが、この機能を使うと1P表・1P裏・2P表・・・の順に印刷してくれるので分割の必要がありません。また、片面を印刷してからひっくり返してセットすると、用紙が不規則に反っていたりして、フィードエラーが頻発します。経験者も多いと思います。しかしHP990cxiの場合、一度フィードインした用紙をフィードアウトすることなく表裏をひっくり返して印刷するので、その心配が要りません。つまり、「実用になる両面印刷」といえるでしょう。

  6. 印刷速過ぎ。よくわかりませんが、あっという間に印刷します。メーカー公称値モノクロ毎分17枚だそうです。ドラフト印刷に限ればレーザープリンタ並みですね。カラー写真印刷でもA4で1分かからないようです。C社の高速タイプといい勝負をします。

  7. 本体に印刷キャンセルボタンが付いている。これ、嬉しいです。「しまった!」と思ったら、速攻で印刷を停止・キャンセルできます。これもインク節約につながります。

 以上が私の個人的な使用感です。なんかものすごいプリンタのように思えてきますが、要は上手く妥協してある機械なのです。

  1. 最高の写真画質にこだわらない。
  2. インクとヘッドの分離にこだわらない。
  3. 広告にこだわらない。

ポイントはこの3点です。確かに写真印刷は他社と比べれば若干劣りますし、インクも割高に感じますが、このことがそれ以外の使用感の向上に大きく寄与しているのです。正直、C社の新型と比べて迷っていたのですが、最後は価格がモノをいいました。C社の最近のものは印字速度もHP並みに速く、写真印刷も綺麗なのですが、同価格帯で見るとHPに軍配が上がりました。また、E社の名前が出てきませんが、印刷速度にこだわらない方にはイチオシです。写真印刷の美しさや使い勝手はピカイチです。

 あと、忘れてならないのは、N社のPictyシリーズがHPプリンタのOEMであるということ。当然インクなどの消耗品は共通です。これまでの文はHPをNECに、deskjetをPictyに置き換えていただいて全く問題ありません。

 これからプリンタの購入をお考えの方、プリンタ選びの参考にしていただければ幸いです。

LANプリンタサーバ さて、話はガラリと変わります。サンタ氏からプリンタサーバを譲ってもらいました。そう、普通のプリンタをスタンドアローンのネットワークプリンタにするインタフェースです。プリンタといえばセントロ(パラレルポート)かUSB、せいぜいSCSIですが、これが10/100BASE-T(X)になります。ハブとプリンタの電源さえ入っていれば、LAN上のどのマシンからでも利用できるようになります。この気軽さはクセになること請け合いです。このコレガ製のLANプリンタサーバ、NT系のWindowsであればTCP/IPのみで簡単に認識させることができます(95/98系では要NET BEUIでちょっとイヤな感じ)。実際に使ってみてはじめて実感できる便利さがあることを再認識した今日この頃です。