いまさら

レコードプレイヤーを買いました

by 杉之原名人

 オーディオのディジタル化が進みはじめてからかなり経ちますが、特に目新しい技術の見られない昨今です。そんな中、先日レコードプレイヤー(俗に言う"ターンテーブル")を購入しました。9年前の製品で、その価格6,980円(定価は\15,000)。しかもオーディオテクニカ製で、歴としたメーカー物です。CDなどが誰でも手軽に焼けるようになり、アナログレコードをディジタル化する用途に格好の製品であることは間違いありません。かくいう私もまさにそのために購入したのですが。

audio-technica AT-PL30 私を購入に踏み切らせたのは価格だけではありません。その性能も十分過ぎるほどのものだった点も大きな要因です。クラシックなベルトドライブ方式ですが、ワウフラッターは0.25%、SN比45dBと、CDが登場した頃のスタンダードモデルと比べても遜色ありません。さらにはPhoneアンプを内蔵しており、スイッチによる切り替えで、LINE出力とPhone出力を任意に選択できます。ラジカセやミニアンプスピーカーに直接接続する使用法を前提にしているようです。もちろんパソコンによるサンプリングにも大変助かります。ただし、出力端子がピンジャックのオスが50cm程のケーブルと共に出ているだけなので、接続する機材によっては不便を感じることがあります。

 さて、その他の機能ですが、これも必要十分といえます。17cmドーナツ盤と30cmLP盤に対応したフルオート方式で、33・45rpm切り替えスイッチ、START、CUT、上下リフトスイッチが前面に配置されています。ちなみにアース線はありません。また、カートリッジはVM型(注1)で、交換可能です(すでに生産中止のようですが)。ただし針圧調整はできません。

 全体的に何となく安っぽい"つくり"なのですが、ポイントはしっかり押さえてあるなという印象を受けます。インシュレータもそれなりのものがついていますし、ターンテーブルのゴムシートもしっかりしており(中央の穴が大きすぎるのは気になるが)、さらに交換用の駆動用ベルトも別売りで用意されています。驚くべきはターンテーブルが軽いプラスティック製であることです。ターンテーブルは重いほど回転ムラが抑えられ、振動にも強いという観念がありましたが、電子制御の高性能DCサーボモーターの前では無用の長物のようです。おかげで回転が始まると一瞬で目的の回転数で安定します。「目から鱗」でした。ターンテーブルの縁のギザギザを見ながら回転数を微調整していた頃が懐かしいです。
カバーをあけたところ

 そのようなわけで、現在こつこつと手持ちのアナログレコードをmp3ファイル化しています。WAV化しようとも思いましたが、音のクオリティからいっても無意味なことなのでこちらを選びました(といいつつもビットレート160kHzでコンバートしてますが)。ディジタル化のメリットはポータビリティの向上だけではなく、音のクオリティにもあります。高機能な波形編集ソフトを使用することにより、アナログレコードに特有のノイズをある程度消去することができるからです。ノイズの酷いものは波形エディタにかけて、ひとつひとつ手作業で切っています。全体的に気になるものはノイズコンプレッサー機能を利用します。どちらにしろ、意外と短時間で処理できるのが嬉しいところです。

 実はこの作業に入る前、USBインタフェースのオーディオ入出力インタフェースの購入を考えていたのですが、価格が9千~2万円もし、明らかにこの用途ではオーバースペックであるため断念したという経緯があります。現在はPCI接続のサウンドカードのLINE入力からサンプリングしていますが、まったく問題ないレベルの音が得られていると思います。最近の音源モジュールから録音する場合はちょっとマズいかもしれませんが。

 何はともあれ、ちょっとの出費とそれなりの時間を費やすことで、大量のアナログレコードがCD数枚に収まってしまいそうです。今度はカセットテープにあるお気に入りの曲などにも挑戦してみようかしら・・・・

注1) VM型:MM型の"デュアルマグネット"タイプの一種。MM型は"Moving Magnet"の略で、ピックアップ針に極小の磁石が、カートリッジ側に検出コイルが付いているタイプのもの。逆に針側にコイルが付いているものをMC型"Moving Coil"といい、動く部分が磁石に比べて軽いコイルであるため、高音の特性に優れ、高級機用として人気があった。VM型の'V'は磁石の配置形を表しているらしく、LR検出に別々の磁石をつけたもののようです。しかし、これによって飛躍的に音質が向上し、オーディオテクニカの名を上げたとも言われています。
H14/11/18