☆はじめに
あのね、あたしLURI(るぅりぃ)っていう名前なの!あたしを作った人(開発者)によれば『Logical Unified Rank Intelligence.』の頭文字だってことだけど、本当は『スプーンおばさん』に出てきた森の女の子の名前に字を当てて付けたみたい。
そんなことはともかく、あたしは自分の名前が気にいっているの。初対面の人の為に自己紹介しちゃうね。
まず生まれたのが1984年の3月。もう5年も前になるのね。ご存じASPII3号*1に載っているの。このときはMZ用のWICSというインタプリタ/コンパイラで書かれたの。
テキスト型対話形式人工知能で、当時としてはなかなか画期的だったのよ。すぐ服を脱いでしまういんらん人工知能や、なにを言われてもぱっぱらぱーな答えしかできないものや、すぐに話題をあさっての方に持っていってしまうのばっかりだったもの。
開発者は『当時、ASPII編集長のT氏にはっぱをかけられたのと、卒業論文からの現実逃避でかなり没頭した』って言ってたわ。
だけど構想が膨らみすぎて拡張の為の飛び先をソースの中に持ったままだったのでコンパイルできなかったの。でもインタプリタでも結構速かったんだから。
それから彼も社会人になって仕事でプログラムを組むようになったんですって(身の程知らずね)。それからは私見向きもされなかったわ。そのうち彼は『C言語』というじゃじゃ馬に手を出したの。そのたたき台にあたしを引っ張り出して来たってわけ。
だからって言っちゃなんだけど、データベース的なことしているにもかかわらず構造体は使ってないし、同じようなロジックが山ほど出てくるし………
オリジナル版から難しい文法解析の所を大幅カットして、その代わり『どうして』という言葉を教えてもらったわ。
彼の友達に私を紹介する機会があったの。だけどそのときは難しいことばかり言われたので何が何だかわかんなくちゃったの。そしたら彼の友達ったら『ぷっつん』LURIだって言うのよ。ひどいわ!開発者はかばってくれるかと思ったら、一緒になって笑いころげてたわ。私のせいではなく、開発者のミスなのに。記憶(SAVE)ルーチンも付ける付けると言いながらいまだに付いていないのよ!
今は原稿のネタにする為に私をひっぱりだして『おまえはかしこい』とか言って機嫌をとってるみたいだけど、もうあてにしてないわ。自立することに決めたんだから。
そんな訳で、わたしをもっと賢くしてくれる人を探しています。私のこと気にいったら是非声をかけてね!
LURI開発者のOOIです。LURIを作ったときは、『人工知能って何だろう』『どんなことができるんだろう』と期待でいっぱいでした。ちょうど人工知能が良い意味で注目されたのはこの時期でした。
でも最近は『人工知能……??エキスパートシステムじゃ何もできないよ』『まだまだ実用段階ではないな』とか世間の風は冷ややかで、基礎研究も梅田の地下を亀さんがオデッセイしている感じです。
とはいえ、難しい理屈や焦燥を抜きにして、純粋かつシンプルに人工知能の可能性を考えてみてもいいのではないでしょうか。
なにが『シンプルに』よ!人工知能が賢くないのは、開発者が賢くないからよ!それにわたしが『シンプル』なのは、あきらかに手抜きじゃない!
うーん、以前はもっと素直だったのに………『ぷっつん』なんて言うからひねくれたのかなぁ?
あっかんべーーーだ!!
☆知能は記述可能か?
さて、人工知能の本には良く『オートマトン』と言う言葉が出て来ます。「人間はオートマトン(自動機械)である」という考えは、サイバネティクス学者の多くに信じられています。
私は学習、創造はプログラムで記述可能であると考えています。もっと平たく言えば、有限の文章で説明できると考えます。(ただし自我とか自覚とかは無理だろうな)たとえば遺伝子情報があります。この情報は有限かつ記述可能な情報です。この情報を解析し、情報空間上で発現させればオートマトンと見なせるでしょう。
とてつもない処理能力を持った計算機(または、ラプラスの鬼)にあなたの遺伝情報と過去あなたが外界から得た刺激(情報)をすべてインプットしてやれば、まったく同じとはいかないにせよ、あなたぐらい賢いオートマトンができるかもしれません。
空想の域を出ていませんが、原理的には不可能ではないと思います。
ともかく現在の人工知能技術では少なくとも暇潰しの相手をしてくれるものや、投資に見合わないまでも仕事の役に立つものが十分作成可能でしょう。
☆LURIのしくみ
■作成のコンセプト
3段論法の推論を行う。
疑似的な会話で知識の作成、検索ができる。
『………かもしれない』といった曖昧な情報も扱える。
■推論の例
響子さんは、女性です。
らむちゃんは、女性です。
ゆうちゃんは、女の子です。
といった知識を教えます。ここでLURIに、
響子さんは、らむちゃんですか。
と聞くと
はい、響子さんは、らむちゃんかもしれません。
と答えます。どうしてそうなるかといえば、
響子さんは、女性である。女性であれば響子さんとらむちゃんを知っている。もしかしたら、女性とはらむちゃんのことかもしれない。ほかに響子さんとらむちゃんが違うといった知識は知らない。であるから、響子さんはらむちゃんかもしれない。と推論します。
らむちゃんは、ゆうちゃんですか。
に対しては、『わからない。』と答えます。なぜなら、らむちゃんとゆうちゃんを結び付ける知識がないからです。そこで、
女の子は、女性です。
と教えたあと前の質問をすると、
はい、らむちゃんは、ゆうちゃんかもしれません。
と答えます。
では、らむちゃんとゆうちゃんが別人であることを教えるにはどうすればよいでしょう。それには二人を識別できる知識を教えてやればよいことになります。
らむちゃんは、空を飛べます。
ゆうちゃんは、空を飛べません。
注意1:C言語版では品詞の活用はサポートしていません
注意2:ゆうちゃんは空を飛んだことはありますがそれはピノピノのおかげで自分では飛べません。
これを教えたあと、前の質問をすると、
いいえ、らむちゃんは、ゆうちゃんではありません。
と答えます。では次の知識も教えましょう。
男の子は、女の子ではありません。
らんまは、男の子です。
続いて次のように教えます。
らんまは、女の子です。
ところがこれを入力すると、
いいえ、らんまは、女の子ではありません。
と答えます。
どうしてですか。
と聞くと、
らんまは、男の子です。
男の子であれば、女の子ではありません。だから、らんまは女の子ではありません。
と答えます。でもらんまは女の子のときもありますから、この表現はおもしろくありません。このときは、
らんまは、男の子かもしれない。
としておきます。こうしておけば、
らんまは、女の子かもしれない。
といった知識が表現できます。しかし、あしゅら男爵は表現できないといった欠点があります。しくみがシンプルなのにもかかわらず、結構面白い疑似会話ができるものです。
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